杜氏あいさつ
中山道の中津川宿本町通りの酒販店を継いで30年。
酒の専門店として全国津々浦々の蔵元へ訪問してきました。
何度お邪魔しても「特約店」になれない蔵元さんも勿論ありました。
長年の間、色々複雑な思いを抱きながら、ご縁をいただく蔵元さんとお客様の橋渡し役として、しっかりと造りを伝え、蔵の背景から味わいを伝えて参りました。
しかし、所詮は小売り。「人の褌で相撲をとっている」という思いは抜けきれませんでした。
造り手の本当の苦労を心底実感したわけではなく、各蔵を出張で訪れ、泊まりでお手伝いをし、写真に収め、如何にも手伝って来て酒の真髄を知っているかのようにお客様に伝えていた自分に納得ができませんでした。
地元の中津川は小さな街ですが5社も酒蔵があります。その事に誇りを持っていた私は各蔵元さんに協力していただき「中津川五銘酒」という商品を作りました。
「中津川五銘酒」は、大変人気でお土産や、贈り物に使っていただける商品になりました。
しかし、その中で唯一全て手造りで、江戸時代からの造りを守り、ご夫婦二人で最も少量の約20石程しか造っていない蔵が、後継者無くいずれは廃業という話を聞き、何とか私にやらせて下さい。との想いで今に至りました。
広島にある「日本酒類総合研究所」の寮に入り2ヵ月の杜氏の勉強と試験を受け、50歳になり新たな挑戦となりました。
21代続いた先代の日本酒「春一番地」と「小野櫻」に続き、私の新ブランド「ふかもり」を加え出発です。
世界一と言っても過言では無い程の小さな造り酒屋。
小さな蔵で未だに木桶の甑でお米を蒸し、木舟で搾る手作りのお酒。
全国でも稀なこの蔵の酒を多くの方に味わっていただけるよう精一杯お伝えして参ります。
22代目当主 大鋸伸行